主な原因疾患
主な疾患名とその特徴
主な疾患名 | 特徴 |
---|---|
血管性認知症 | 自覚のある物忘れ。喜怒哀楽が激しい |
アルツハイマー型認知症 | 直前の記憶が抜け落ちる |
レビー小体型認知症 | 実際には無い物が、あるように見える すり足のような歩き方 |
前頭側頭型認知症 | 別人のような言動 |
脳血管障害
●血管性認知症
脳卒中と総称する脳梗塞や脳出血などの脳血管障害を原因とする認知症です。
障害を受ける部位により異なりますが、概ね次のような症状が見られます。
まず、記憶障害は「失念型」で、もの忘れに対する自覚は比較的保たれています。まったく記銘されないわけではないので、時間をかけたりヒントがあれば思い出しやすいといえます。
一方、感情コントロールはうまくできず、些細なことで激怒するなど喜怒哀楽が激しくなる傾向が見られます。昼夜のリズムが乱れやすく、呼びかけなどの反応が鈍い傾向も見られます。
アルツハイマー型認知症をはじめとする変性疾患とは異なり、進行も単調ではなく、一進一退しながら段階的に進むのが特徴です。原因が明確ですから、脳卒中などを予防することが血管性認知症の予防にもつながります。
変性疾患
●アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、認知症全体の中で占める割合が最も高い原因疾患です。比較的ゆっくり進行するとされています。
最も特徴的な症状は記憶障害です。通常のもの忘れは、例えば「朝食で食べたのはパンと何だったか…… 」などと断片的で何かをきっかけに思い出せますが、アルツハイマー型認知症のもの忘れは、朝食を食べたこと自体を忘れる「脱失型」です。記銘(記憶の覚え込み)ができていないので思い出せません。アルツハイマー型認知症では、脳の中心付近にあって記憶を司る「海馬」から萎縮が始まるため、と考えられます。萎縮はそこからまわりに拡がっていきます。
もの忘れに対する自覚が乏しいのも特徴です。あったこと自体を記憶していないので、本人にとっては当然です。一方、新しいことを覚えられなくても、古い記憶や体で覚え込んでいることは比較的長く保たれています。また感情機能も比較的長く良好に保たれるので、初期の頃は一見すると普通に見えます。
●レビー小体型認知症
発見者の名前に由来する「レビー小体」は、脳の神経細胞にできる「封入体」と呼ばれる異常な物質です。
レビー小体型認知症ではこれが大脳皮質にも広く見られます。
幻視を中心に、幻覚や幻聴、妄想などの精神症状が出現しやすいのが大きな特徴です。これらは日中、意識もはっきりしている時に、本人にとってはリアルな体験として現れます。
認知機能では、しっかりしている時とボーッとしている時の落差が激しいのも特徴です。レビー小体はパーキンソン病の原因でもあるため、手足がふるえたり、筋肉がこわばってスムーズに動かせないなどのパーキンソン症状も見られます。
初期には記憶障害よりも、認知機能や作業効率の低下などが目立ちます。
●前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は前頭側頭葉変性症の一つで、脳の前頭葉や側頭葉が限極的に萎縮します。40代から65歳未満で発症例が多く、10 〜15年経過しながらゆっくり進行します。従来「ピック病」と呼ばれていた疾患もここに含まれます。
最も特徴的な症状は、人格変化や非常識で脱抑制的な行為など行動面での変化です。記憶や見当識などの認知機能は比較的長く良好に保たれます。アルツハイマー型認知症とは正反対のタイプです。
このため、万引きなどの社会的逸脱行為で警察沙汰になったり、身だしなみが乱れても無頓着など「我が道を行く行動」が見られるようになります。また、同じことをくり返す「常同行動」や、座ってもすぐに立ち上がる「立ち去り行動」などのほか、同じ言葉やフレーズを反復する「常同言語」などの言語機能障害も見られます。
進行した前頭側頭型認知症では、記憶障害や見当識障害などの認知機能も低下してきます。
なお、同じ前頭側頭葉変性症の中には、左側頭葉が萎縮して失語症状が先行して出現する進行性非流暢性失語や意味性認知症もあります。いずれも初期では、記憶障害も人格変化なども目立ちません。
その他の類型の認知症
脳血管障害でも変性疾患でもない類型の原因疾患による認知症です。その病気本来の治療により治る可能性もあります。
正常圧水頭症
溜まった髄液が脳を圧迫して認知症の症状が現れます。
頭部外傷後遺症
頭を強打したことにより認知症の症状が現れることがあります。
頭部手術後遺症
頭部の手術の後遺症として認知症の症状が現れることがあります。