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若年性認知症支援のポイント

若年性認知症は高齢者の認知症と違い、本人が現役世代であるため、家族や社会の中で精神的、経済的な役割をしっかり担っている場合がめずらしくありません。したがって支援者には、必要なサービスを単に紹介するだけではなく、これまで担ってきた役割の補完を視野に入れた援助が求められます。

本人に対する支援

若年性認知症の本人支援でまず大切なのは、病気のどんな段階でも可能な限り本人と向き合い、きちんと本人から話を聞くことです。

〈初期の頃〉

認知症と診断を受けた頃であれば、ショックとストレスの中にいることは想像に難くありません。「やっぱりそうか…… 」と思いながらも、「なぜ自分が…… 」などと腹が立ったり悶々と自問し続けるなど、なかなか病気を受け入れられません。こうした心理的な側面をよく理解し、配慮していくことが求められます。
一方、「みんなの仲間でいたい」「役割を持って人の役に立ちたい」「自分で決めたい」などの意識や欲求は保たれています。特に退職直後などでは、より強いと思われます。これらの気持ちや欲求を尊重し、それが実現できるような活動や社会参加を支援していくことが期待されます。
現状ではまだ例が多くありませんが、病状や能力に応じた福祉的就労やボランティア活動、「居場所」への参加などがその具体策となるでしょう。支援者には、それらの情報収集とともに新たな資源の開発や育成も、役割として求められています。

〈介護サービス等の利用時〉

デイサービス等の介護サービスの利用を始める場合でも、一方的に家族の話だけに耳を傾けるのではなく、本人としっかり向き合うべき基本は同じです。
その上で支援者は、病状や能力、思いや得意なことなどのアセスメントにもとづき、可能な限り個別のプログラムに対応してもらうよう、サービス事業所に働きかけをしましょう。作業意欲等がある場合は、その人に合った作業などを取り入れてもらうことも重要です。
サービス事業所は、これらに対応するとともに、安心できる環境の調整も大切です。本人が安心できる環境をつくることが、BPSDの出現や悪化を未然に防ぎます。そのためには担当者との信頼関係が欠かせません。馴染みの関係を築くことや、その関係も特定の人だけでなく可能な限り複数のスタッフに広げることが重要です。
また、達成感を得られるよう配慮することもポイントです。例えばカラオケなら本人の好きな歌を歌うなど、無理をせずにやり切れることをしてもらいます。もっとも、だからと言って得意なことばかりだと、逆に飽きて拒否されかねませんから、工夫も必要でしょう。

家族に対する支援

多くの人にとって、家族が若年性認知症になることは初めての経験ですから、家族が混乱するのは当然のことです。不安や疑問、悩みが尽きない中で、関わる支援者が適切に、病気や利用できる支援策について今後の見通しを示すことができれば、家族の安心につながります。
その際、若年性認知症の人のことを地域に隠さずオープンにすることで周囲の理解が得られ、精神的に楽になる場合があることも、紹介するとよいでしょう。
「認知症の人と家族の会」などの当事者組織や、その例会などの催しを紹介することも重要です。同じ境遇の人たちに話を聞いてもらったり、そこで聞く具体的なアドバイスなどは、家族にとって大きな励みになります。
また、病気の進行や家族のかかえている問題に即して、利用できる制度などを紹介します。制度は概してわかりにくく、中には待っていれば自動的に適用されると誤解されている場合もありますので、支援者にはタイムリーでていねいな説明が求められます。
さらに、実際に介護サービスなどを利用するようになった時にも、家族に配慮したサービスの調整が必要です。家族が働いていれば、例えばデイサービスの送迎時間も勤務時間などとの調整が必要になります。徘徊などが出現すれば、GPSによる位置検索サービスの手配や地域の警察署との情報共有の仕組みなどの、具体的な支援が必要になる場合もあるでしょう。
加えて、親が若年性認知症になったことで子どもが精神的なショックをかかえている場合もあります。子どもの成長に合わせて、親の病気について説明する機会を設けることが重要です。
その場合、必要に応じて他の家族、学校、地域などとも連携しながら見守り、支援する必要があります。
若年性認知症の人を親にもつ子どもの特徴として、まだ学校に通学中である場合も多いでしょう。経済状況により教育費の支払いが困難になった場合には、子どもの就学を支援する制度もあります。

関係機関との連携

若年性認知症の人の場合、初期の段階で、まだ心身面が比較的自立していると、介護保険の要介護認定を受けたり、精神障害者保健福祉手帳を取得できたとしても、高齢者が介護サービスを利用する時のケアマネジャーとの関係と違い、相談ができる担当者がいない、または明確になっていない場合があります。
すぐにはサービスを利用しない、当面の間は困り事はないと思っていたとしても、今後のことを考えると、かかりつけ医や病院の相談員(医療ソーシャルワーカー)、地域包括支援センターやケアマネジャー、民生委員などの地域の人たちとのつながりを絶やさないようにすることも重要です。

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